【例題あり】坂口志文教授ノーベル賞!制御性T細胞(Treg)をわかりやすく解説|2026年度入試・教科書への影響まとめ

【例題あり】坂口志文教授ノーベル賞!制御性T細胞(Treg)をわかりやすく解説|2026年度入試・教科書への影響まとめ

【例題あり】坂口志文教授ノーベル賞!制御性T細胞(Treg)をわかりやすく解説|2026年度入試・教科書への影響まとめ

作成日:

2025/10/09

更新日:

2025/11/27

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坂口志文教授、2025年ノーベル生理学・医学賞を受賞

2025年のノーベル生理学・医学賞に、大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 坂口志文特任教授らによる免疫反応を抑える「制御性T細胞」の発見における研究が選出されました。

日本人(受賞時点で日本国籍であった人)の研究者がノーベル生理学・医学賞を受賞するのは、2018年に京都大学 高等研究院 特別教授(当時)・現名誉教授の本庶佑教授が、免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用研究にて受賞されて以来、7年ぶりの快挙となります。

 教科書・学習指導要領・入試への影響

ここで気になるのが、教科書や学習指導要領の改訂、そして今年の受験への影響です。

2018年に本庶名誉教授がノーベル賞を受賞した際には、免疫分野の記述が大幅に拡充され、翌年度の入試でも関連問題が複数出題されました。

同様に、京都大学 iPS細胞研究所(CiRA) 山中伸弥教授によるiPS細胞の発見以降は、再生医療や幹細胞といった分野が教科書で重点的に扱われ、入試での出題頻度も顕著に増加しました。

さらに、ノーベル賞受賞により研究分野に対する社会的関心が高まり、研究がさらに加速することから、この影響はノーベル賞受賞年から年々増加していく傾向にあります。

そのため、今回も免疫系、特に免疫制御や遺伝子発現に関する単元が拡張される可能性が高く、今後の入試でも重要なテーマとして取り上げられるでしょう。

 また、坂口教授の研究は免疫学にとどまらず、生物・医療倫理・応用科学など、幅広い観点から大学入試に出題しやすいテーマです。
したがって、2026年入試(特に共通テスト・国公立二次・医歯薬系・理系私大)では、高確率で関連問題が登場すると予想されます。

 Tregの理解と理系生物の学習・指導対策

このように、理系生物では最新研究からのアップデートが頻繫にあったり、特定分野の難易度・扱い範囲が急激に上がったりと、指導が難しいという課題があります。
この記事では、今回のノーベル賞の「制御性T細胞(Treg)」についてわかりやすく解説し、今年度入試への対策や、内容の変化が激しい理系生物のおすすめの勉強方法・指導方法について詳しく解説します。

1. 制御性T細胞(Treg)とは?

1-1. 基本の免疫システム(おさらい)

免疫系は、ウイルスや細菌などの異物(抗原)を排除し、体を守る仕組みです。
しかし、この防御システムが過剰に働くと、正常な自分自身の細胞まで攻撃してしまい、自己免疫疾患などの病気を引き起こすことがあります。
そのため、「攻撃」と「抑制」のバランスを取る制御機構が、免疫の恒常性維持には欠かせません。
(出典:大阪大学 公式リリース, 2025年10月6日)

1-2. 以前の考え方:「中心的な免疫寛容(central tolerance)」

長らく免疫学では、「自己を攻撃しないしくみ(免疫寛容)」は、胸腺で自己反応性T細胞が除去される過程によって確立されると考えられてきました。
この胸腺での制御を「中枢性免疫寛容(central tolerance)」と呼び、免疫の選択プロセスの中心的な仕組みと位置づけられていました。
(参考:Immunology, Nature Reviews など主要レビュー論文)

1-3. 坂口志文教授らの発見:「末梢性免疫寛容」と制御性T細胞(Treg)

坂口志文特任教授(大阪大学免疫学フロンティア研究センター)は、
胸腺の外(末梢)でも免疫反応を抑える仕組みが存在することを世界で初めて体系的に明らかにしました。

この「末梢性免疫寛容(peripheral tolerance)」を担うのが、制御性T細胞(Regulatory T cell, Treg) と呼ばれる特殊なT細胞群です。

  • 存在の確認(1995年)
     坂口教授は1995年、CD4陽性T細胞の一部に「免疫反応を抑制する細胞集団」が存在することを報告しました。
     この発見により、従来の“免疫は攻撃のみ”という理解が大きく転換されました。
     (出典:大阪大学 公式リリース/NobelPrize.org/Live Science)

  • 作用機構と遺伝子の解明
     その後の研究により、「Foxp3(フォックスピー3)」という遺伝子がTregの働きを決定づける主要因子であることがわかりました。
     Foxp3遺伝子が変異するとTregが機能不全に陥り、重度の自己免疫疾患が起こることも確認されています。
     (参考:Frontiers in Immunology, Vol. 14, 2023/Nature Reviews Immunology, 2019)

つまり、Tregは免疫の“アクセルとブレーキ”のうち、過剰な免疫を抑えるブレーキの役割を担う細胞です。

2. 臨床応用・医療への展望

坂口教授の発見は、基礎免疫学だけでなく医療応用にも広がりをもたらしました。
Tregの機能を理解・制御することで、次のような応用が期待されています。

  • 自己免疫疾患・アレルギー治療
    Tregを増やしたり活性化させることで、過剰な免疫反応を抑え、炎症性疾患やアレルギーの治療に応用できる可能性があります。

  • がん免疫療法
    がんの周囲ではTregが過剰に働いて免疫応答を抑えることがあり、Tregを一時的に抑制することで免疫を強め、腫瘍を攻撃しやすくする戦略が研究されています。

  • 臓器移植医療
    移植臓器に対する拒絶反応を抑えるため、Tregを活用して免疫を調整する臨床研究が進められています。

  • 創薬・抗体医薬
    Tregの活性を制御する分子標的を探す研究は、次世代免疫治療薬の開発にもつながる基盤となっています。

(出典:大阪大学 公式発表, Frontiers in Immunology 2023)

3. なぜすごいのか:世界の免疫学を変えた発見

3-1. 免疫の“ブレーキ”の仕組みを明らかにした

坂口教授の研究は、免疫系が単に“敵を攻撃するシステム”ではなく、過剰反応を防ぐブレーキ機構を備えた動的システムであることを示しました。
免疫の暴走を防ぐ細胞群を実証的に示したこの成果は、世界中の免疫学の理解を根本から書き換えるものでした。
(出典:大阪大学公式リリース/NobelPrize.org)

3-2. 応用可能性と安全性の両立を可能にした基礎発見

制御性T細胞の概念は、免疫反応を「強める/抑える」という両方向の制御を可能にしました。
この知見があることで、がん免疫療法・アレルギー治療・自己免疫疾患治療などの免疫調節医療の基盤が形成されました。
(参考:Nature Immunology, 2020)

3-3. 教科書を書き換えた発見

それまで免疫寛容は「胸腺内で完結する」と理解されていましたが、坂口教授の発見により、体内の末梢組織でも免疫制御が行われることが明確になりました。
この概念転換により、免疫学の教科書に「末梢性免疫寛容」「制御性T細胞」という項目が新たに追加され、免疫教育の枠組みを刷新しました。
(出典:大阪大学公式リリース/主要免疫学教科書改訂記録, 2020年度版)

3-4. 国際的評価と長期的意義

制御性T細胞(Treg)の発見は、免疫学における「第2の革命」とも呼ばれ、
世界の研究者から長年にわたって高く評価されてきました。
今回のノーベル生理学・医学賞受賞は、基礎研究から臨床応用に至る橋渡しを示した日本の免疫学の成果として、国際的にも大きな意味を持ちます。
(出典:大阪大学 公式リリース, NobelPrize.org)

出典一覧

  • 大阪大学 公式ニュースリリース(2025年10月6日)
    https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2025/10/06001-2

  • NobelPrize.org, “The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2025”

  • Frontiers in Immunology, Vol. 14 (2023): The Role of Regulatory T Cells in Peripheral Tolerance

  • Nature Reviews Immunology (2019): Foxp3 and the Regulatory T Cell Lineage

  • CNN Japan (2025年10月7日): 「坂口志文教授、ノーベル医学・生理学賞を受賞」

4. 制御性T細胞(Treg)は学習指導要領で問われうるか?

文部科学省「高等学校学習指導要領(生物・生物基礎)」では、免疫について次のように定められています:

「免疫のしくみについて理解させる。その際、抗原抗体反応、体液性免疫および細胞性免疫、免疫記憶、免疫の暴走(アレルギーや自己免疫疾患)などを扱う。」

ここで「免疫の暴走」や「自己免疫疾患」に触れているため、それを防ぐメカニズムとして「制御性T細胞(Treg)」が背景知識として紹介されることは十分あり得ます。

現行教科書にも「Treg」「制御性T細胞」という単語そのものはまだ明記されていませんが、免疫の調節・抑制の項目で参考資料・囲み記事・発展欄などに概念が紹介されています。

5. 【例題付き】共通テスト~医学部まで:想定される出題形式

では、実際に出題される場合、どういった問われ方がなされる可能性があるのか、例題を用いて紹介します。本記事では、制御性T細胞(Treg)に関する例題を 2問のみ抜粋 して紹介。
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5-1. 【基礎理解型】免疫寛容の理解を問う

出題例(共通テスト形式):

問:文章の内容として正しいものを、次の中からすべて選べ。

  1. 免疫は、異物を排除するだけでなく、過剰な反応を抑える仕組みもある。

  2. 自己免疫疾患は、免疫のはたらきが弱すぎることで起こる。

  3. 免疫の暴走を抑えるリンパ球は、外部から侵入した病原体を直接破壊する。

  4. 坂口志文氏が発見した制御性T細胞(Treg)は、免疫を抑える働きをもつ。

→ 正解:①と④

解説:

  • ① 正しい。
     免疫には“攻撃”と“抑制”の両面があり、免疫の恒常性を保っています。

  • ② 誤り。
     自己免疫疾患は、免疫が“強すぎて”自分の組織を攻撃することで起こります。

  • ③ 誤り。
     免疫を抑えるリンパ球(制御性T細胞)は、病原体を直接攻撃するのではなく、他の免疫細胞の働きを弱めてバランスを取ります。

  • ④ 正しい。
     坂口志文教授が発見した「制御性T細胞(Treg)」は、免疫の過剰な働きを抑える役割をもつことで知られています。

出題の狙い:

  • 文章中の情報を正しく読み取り、免疫の「攻撃」と「抑制」の関係を理解しているか。

  • 「免疫が強い=良い」ではないことを論理的に説明できるか。

  • 最新の科学的知見(Treg)を、教科書範囲の文脈で理解できているか。

5-2. 【実験考察型】制御性T細胞の働きを実験的に問う

出題例(上位私大・地方旧帝大レベル):

実験:マウスからT細胞を分離し、制御性T細胞(Treg)を除去した群と除去していない群を比較したところ、前者では全身に炎症が起きた。

(1)この結果からTregの働きとして何が考えられるか。
(2)このような免疫の暴走を防ぐことがなぜ重要か。

解答例:
(1)免疫反応を抑制し、自己成分への攻撃を防ぐ役割を持つこと。
(2)免疫が過剰に働くと自己免疫疾患などを引き起こすため。

詳細解説:

  • 実験の読み取りのコツ:
     「除去した群で炎症が起きた」ということは、除去したもの=免疫を抑えていた要素であるということ。
     したがって、Tregは「免疫を抑制する」細胞であることがわかります。

  • 免疫暴走のリスク:
     免疫系が過剰に働くと、本来攻撃すべきでない自分自身の組織を攻撃し、「関節リウマチ」や「1型糖尿病」などの自己免疫疾患を引き起こします。
     Tregはこれを抑え、免疫系を“冷静に保つ”ブレーキの役割を果たしています。

  • ポイント整理:
     ・ 除去実験=機能の特定に有効な手法
     ・ 炎症が起こった→免疫抑制の欠如→Tregの抑制機能が証明された

出題の狙い:

  • 実験事実からTregの働きを“推論”できるか。

  • 図表・実験問題における「除去実験=機能特定」の発想が使えるか。

発展学習のヒント:

Treg研究は臨床応用にもつながっており、 「がん免疫療法」や「自己免疫疾患治療」などへの応用を説明できると記述試験で強い印象を与えられます。

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6. 理系生物の指導方法とDr.okkeの活用

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執筆者

ライター(野口)
ライター(野口)

野口 真生

野口 真生

株式会社okkeマーケティング担当。京都大学総合人間学部/人間・環境学研究科卒。

大手家電メーカーにて新規商材・ECサイト運営を担当後、okkeに入社。

好きな動物は猫とニホンザル。

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